Yu Motooka
CÔNEのシェフパティシエ・本岡 遊に、今までの経歴をはじめ、お菓子やコーヌへの想いなどについて尋ねてみました。
(取材・文:石原かんな)
「お菓子を楽しく作っていいんだ!」
と気づいたフランスでの日々
-本岡さんがお菓子作りを始めたきっかけは?
もともと料理が好きで料理を学ぼうと思っていたんです。作るのが好きというより、「自分が作ったものを食べて喜んでもらえる」というのが嬉しくて…。ということは、「お菓子」ならもっと喜んでもらえそうだなと気づいて。例えば、人がケーキを見た時、食べた時の嬉しそうな反応ってありますよね。そんな風に「喜んでもらえる、楽しんでもらえるお菓子を作りたい」という想いで製菓技術を学べる専門学校に進みました。
-その後、コーヌさんを開くまでの道のりをお教えください。
卒業後は神戸のホテルでパティシエをしていましたが、お菓子作りの本場で学んでみたいという想いが膨らみフランスへ渡りました。
約2年間、とにかく田舎から都市までフランス中を周りましたね。スイスに近く、チーズや白ワイン作りが盛んなシャンベリー、スペイン国境に程近く、海辺のリゾート地であるバスク地方のサン・ジャン・ド・リュズ、ドイツとの国境沿いにあり、山や川に囲まれた美しいアルザス地方、フランス3大都市のひとつであるリヨン…。それぞれ異なる風景や文化を体感しながら、住み込みで働かせてもらったりしました。
なかでも、「ルレ・デセール(フランスで創設された、パティシエやショコラティエが組織する協会)」の会員でもあるシェフ・セヴさんとの出会いが大きかったですね。
「“パティスリーセヴ”で働かせてほしい」と履歴書だけを持って飛び込みでお願いしたところ快く承諾していただき、下働きだけでなく多種多様なお菓子を作らせてもらえたことにとても感謝しています。
その後日本に戻り、東京や神戸のパティスリーに勤めました。
-セヴさんのお店をはじめ、フランスではどんなことを学ばれましたか?
技術力もしかりですが、「お菓子を楽しく作っていいんだ!」ということを学びましたね。
ヨーロッパでは伝統や宗教も大切ですが、楽しく自由に作るからこそ新しいアイデアが生まれていく。そんな風土があります。伝統的なお菓子や、その地方ならではのお菓子がありながら、モダンなものもどんどん生み出していく情熱があるんですよね。
日本のケーキ屋さんって、入るのも少し勇気がいりますし、入ってからも緊張感がありますよね。ケーキに対しても、作り手の「こうあるべき」が強いと思うんですよね。
僕はフランスに行ってみて、作る人も食べる人ももっと存分に楽しめる方がいいなぁと…。肌身で感じたフランスの文化や、フランスで考えたことは今の「コーヌ」につながっています。
ありそうでなかなかない、
“スイーツも珈琲も美味しい”お店に
-神戸でお店をオープンされた理由は?
「自分のお店を持つなら、生まれ育った神戸で!」と決めていたのと、洋菓子の街と言えば神戸ですよね。これまでの経験を糧に、お客様に喜んでもらえる店とケーキを作りたいという気持ちで、この場所でお店を開くことにしました。
-店名の「CÔNE(コーヌ)」はフランス語ですよね。どんな意味でしょう?
「円錐」という意味です。お客様と私たちなど、たくさんの点がつながって円になり、中心にはスイーツがあり、それが店として立体的にまとまっているようなイメージですね。
お店ではフランクさんのコーヒーやお酒も提供しているのですが、それもひとつの「つながり」です。このつながりは決して凝り固まったものではなく、これからも色んなつながりを増やしていきたいと思っています。
-元町のコーヒー専門店「FRANK(フランク)」さんからバリスタさんも毎日いらっしゃっているんですよね?
そうなんです。「スイーツもコーヒーもどちらも美味しいお店にしたい」とフランクさんに声をかけまして…。実は僕、フランクさんによく通っていたんです。オーナーの北島宏祐さんはコーヒーに熱すぎて “コーヒーの変態”とも言われているぐらいで(笑)。自分がお店を開く時は「北島さんと一緒にやりたい!」と決めていました。
コーヌでのドリンクは20種類以上あり、コーヒーは焙煎から抽出までフランクさんのバリスタが行っています。本格的なスペシャリティコーヒーを楽しんでいただけますよ。
もちろんテイクアウトもしていただけます。
FRANKオーナー/バリスタ・北島宏祐氏
-いいですね!スタンディング形式のパティスリーにされた理由は?
肩肘はらずに、お一人でも入れる店にしたいという想いからですね。
スイーツとコーヒー、お酒などを、海外のカフェやバーのように気軽に楽しんでいただき、そこから会話が広がっていく…。このコーヌを、神戸の街に根づく“社交場”のような存在にするのを目標としています。
また、フランスでは日本よりもっと日常的にケーキを食べる文化があるんですよね。そういう文化を、まずは洋菓子の街・神戸で作り、発信できる拠点にしたいと思っています。
「喜んでもらえるお菓子を作りたい」想いを
軸にコーヌを育て、ファンを増やしたい
-思い入れのあるスイーツはどれでしょう?
「フルヴィエール」ですね。住んでいたフランスのリヨンにある小高い丘「フルヴィエールの丘」をイメージしています。リヨンは美食の街であり、街並みが世界遺産に登録されているほど美しく、丘から見えた景色など思い出がいっぱいです。
このケーキを「シェフの“好き”を集めた」と紹介していますが、“好き”の要素は自家製プラリネのバタークリームと、ザクザクしたキャラメルの触感、そして塩味。僕は甘すぎるスイーツが好きではなく、甘みを抑えながら美味しいものを提供したいと考えています。
また、「サントノーレ」は、キャラメリゼされたプティシューを重ねたフランスの伝統菓子です。見た目も可愛いと好評ですが、どのケーキもまずは「味」が第一です。ぜひ味わっていただきたいですね。
-ケーキやプリンなどの生菓子、カヌレやマドレーヌ、サブレなどの焼き菓子など、多くの種類をご用意されていますね。
はい。特にケーキはクラシックなものからモダンなものまで、また定番から季節感のあるものまで並べています。例えば、いちじくやマスカット、いちごなど、旬のフルーツも順番に登場していきます。
実はロールケーキやプリンなどは、日本人が好きなもので海外にはあまりない。でも、とにかくお客様に喜んでいただくために、“美味しい”ことは当たり前として、イートインにもテイクアウトのニーズにもしっかり対応できる彩り豊かなお菓子をお届けできればと。
テイクアウトでは、ご自身へのご褒美やご家族での団欒はもちろん、ちょっとした差し入れから贈り物までお使いいただけると思います。
-もう常連さんがたくさんいらっしゃいますもんね!これからの夢は?
まだまだこれからですが、まずはコーヌのファンを増やしたいですね。
また、スタッフにはお店を好きであってほしい。みんなの意見でコーヌは作られています。
とにかく「喜んでもらえるお菓子を作りたい」想いが私の原点。
ケーキを、コーヒーを、お店を、そして毎日の生活をお客様に楽しんでいただけるようにこれからもコーヌをみんなで育てていきたいと思います。
FRANKオーナー/バリスタ・北島宏祐氏と